
総務省は2017年12月20日、格安スマホを含めた事業者間の公正競争促進に向けた施策を議論する有識者会議「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」を開催すると発表した。格安スマホ・格安SIMを手掛けるMVNO(仮想移動体通信事業者)を支援することで、料金の低廉化やサービスの多様化につなげるとしています。
簡単に言えば、事業社がひしめき競争が激しくなっている上に、大手キャリアも料金を値下げするなど、格安スマホ・SIMを提供しているMVNOを、今後もユーザーが低い料金で安定した通信環境を使えるように国がテコ入れを行うといったところでしょうか。
12月25日に行われた第1回目の有識者会議の内容を見ていきましょう。
この会議では世界的にみて割高な通信費の引下げを業界に促すものです。そのために格安スマホ・SIMを提供するMVNOが公正な競争を行えるようにしようということですね。
昨年にはMVNOを意識した大手キャリアの料金引下げが行なわれましたし、その結果、競争が激しくなったMVNOでは「フリーテル」を運営する会社が破綻するなど大きな影響が出ています。
この会議では契約ルールや中古端末の流通などについて問題視されていますが、大きな問題は「大手キャリアのサブブランドMVNOが優遇されている」事になりそうです。
具体的には、ソフトバンクが手掛ける「Y!mobile(ワイモバイル)」、KDDI系のUQコミュニケーションズが展開する「UQmobile」などで、これらのサブブランドは「接続時のスピードで格差がでる」や「テザリング機能の提供などで優遇を受けている」といった指摘が出ており、他のMVNOの不満が高まっている状況があります。
実際に料金や通信速度を比べてみましょう。
サブブランドとその他のMVNOの比較
UQmobile | mineo | JJImio | BIGLOAB mobile | |
プラン | プランM データ容量:6GB (最大2年間) | auプラン デュアルタイプ (データ通信 + 音声通話) データ容量:6GB | ライトスタートプラン データ容量:6GB | 音声通話SIM Aタイプ データ容量:6GB |
月額料金 | 2,890円 | 2,190円 | 2,220円 | 2,150円 |
通信速度 | 受信最大: 150Mbps 送信最大: 25Mbps | 受信最大: 708Mbps 送信最大: 50Mbps | 受信最大: 370Mbps 送信最大: 25Mbps | 受信最大: 708Mbps 送信最大: 50Mbps |
テザリング | 可能 | au回線を使うAプランではテザリング不可能 | au回線を使うタイプAでは動作確認なし | iPhoneでは6S以降の端末で可能 |
2年縛り | 2年間の契約の自動更新 契約満了月の翌月以外に解約された場合は、契約解除料9,500円 | なし 但し、利用開始月の翌月より、12ヶ月以内にMNPを利用して、他社様へ転出される場合は、MNP転出手数料として12.420円 | なし 但し、回線の開通から12ヶ月以内の解約は残月×1,000円の違約金 | なし 但し、回線の開通から12ヶ月以内の解約は8,000円の違約金 |
auのサブブランド、UQmobileとauの回線を使用するMNVOを通話とデータ通信6GBのプランで比較してみました。
料金に関してはmineo、JJImio、BIGLOAB mobileのほうが安くなっていますが、テザリングは手持ちのauで使っていたiPhoneをMVNOでも使用した場合には、サブブランド以外のMVNOでは使用できない場合もあるようです。
通信速度に関しては公式サイトでの公表値ですので、使用する環境や場所で大きな違いがありそうです。
そして最大の特徴は契約の縛りですね。
サブブランドであるUQmobileは2年縛りの自動更新で、契約満了月の翌月以外に解約された場合は契約解除料9,500円と大手キャリアと同じです。対してmineo、JJImio、BIGLOAB mobileでは通話も含むプランでは標準の12ヶ月以内での解約では違約金が必要になります。
こうして比較してみるとサブブランドは大手キャリアとMVNOのちょうど中間のいいとこ取りと言ったポジションになりそうですね。UQmobileの野坂社長が「キャリアでもなく、格安スマホでもない、その間となる第三極を狙っていきたい」と発言してることからもそのことが読み取れます。
準キャリアとも考えられるサブブランドのMVNOの勢いが強くなることはユーザーには嬉しいことですが、それによりMVNO業界が競争で疲弊してしまいMVNOがなくなることは、回り回ってユーザーの不利益になりかねません。総務省はどういった対応をするのか注目です。